抄録
シロイヌナズナTERMINAL FLOWER 1 (TFL1) は、花成を遅延させ、花序メリステムを維持する働きを持つ。一方、TFL1とアミノ酸配列が59%保存されているFLOWERING LOCUS T (FT) は、花成を促進させる。これらのタンパク質は花成制御に関与するbZIP転写因子FDおよびFD PALALOG (FDP) に結合し、FTはFD依存的な転写を活性化することが示唆されている。しかし、TFL1が花成を制御するメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。そこで、我々はTFL1の分子機能を明らかにするために、転写活性化ドメインや転写抑制化ドメインを融合したTFL1タンパク質をシロイヌナズナに導入し過剰発現させた。その結果、転写抑制化ドメインを融合したTFL1の過剰発現体は、TFL1の過剰発現同様、遅咲きの表現型を示した。一方、転写活性化ドメインを融合したTFL1の過剰発現体は早咲き、ターミナルフラワーの表現型を示した。これは、TFL1本来の機能が転写活性化ドメインの融合により阻害されたためと考えられる。即ち、TFL1は本来花成遺伝子の転写抑制に機能していることが明らかになった。本発表では、TFL1により制御を受ける可能性のある花成遺伝子の発現についても報告する。