抄録
シトクロムc553(Cyt c553)は、シアノバクテリアにおいて、b6-f複合体から光化学系I(PSI)への電子伝達に働いている。T. elongatus由来精製PSI複合体の光合成活性測定はウシ心筋Cytcを電子供与体に用いると、DCIPの15倍程度まで活性が上昇した。そこで、電子供与体にT.elongatus Cyt c553を用いるために、大腸菌でのCyt c553発現系を構築した。T.elongatusのCytc553をコードする遺伝子であるtll1283を改変して、N末端側シグナル配列を除き、C末端側にトロンビン切断配列とHisタグを付加できるような融合遺伝子を作製した。この遺伝子を大腸菌内でシトクロム成熟遺伝子群CcmABCDEFGHと共発現させることにより、ペリプラズム画分にCytc553の大量発現がみられ、Niカラムを用いて精製することができた。大腸菌を用いたCytc精製において、ヘムが付加されないことが見うけられるが、吸収スペクトルの測定結果より、精製したCyt553にヘム鉄が付加されたことが確認できた。また、精製Cytc553を電子供与体に用いて精製PSIの酸素吸収活性を測定したところ、同一濃度でウシ心筋由来Cytcの10倍ほど高い酸素吸収活性が見られた。