日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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光化学系II複合体と相互作用する機能未知遺伝子の機能解析
*伊藤 史紘J.S.S. Prakash白岩 善博鈴木 石根
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p. 0468

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抄録
ラン藻 Synechocystis sp. PCC 6803の光化学系II複合体(PSII)のプロテオミクスにより、菓子野らはPSIIとともに複数の機能未知タンパク質が精製されることを見出している。そのうちの一つのSll1252は、植物を含む全ての光合成生物のゲノムにホモログ遺伝子が保存され、PSIIの機能に重要な役割を果たしていることが予想された。
Sll1252欠損株は弱光下では生育できるが、強光条件に対する耐性が著しく低下していた。PSIIの活性(H2O →PBQ)と呼吸活性は野生株と同程度であったが、全体の電子伝達活性( H2O →CO2)は低下していた。DNAマイクロアレイ解析の結果、Sll1252欠損株はDBMIBによる阻害時と極めて類似した遺伝子発現プロファイルを示したこと、欠損株のPQ-poolの還元レベルが野生株と比較して高かったことから、Sll1252はPQを介したPSIIからCytb6/fへの電子伝達に何らかの関わりを持つことが示唆された。また野生株にsll1252遺伝子を挿入し、コピー数を増やすと全体の電子伝達活性が増加し、増殖速度も野生株の1.5倍となった。しかし、呼吸速度は変化しなかった。これらの結果はSll1252が光合成電子伝達において重要な役割を果たすことを示唆している。
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© 2010 日本植物生理学会
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