抄録
Gloeobacter violaceus PCC 7421はチラコイド膜を持たないことが知られている唯一のシアノバクテリアである。しかし、チラコイド膜形成に必須とされている遺伝子であるvipp1に類似した遺伝子(glr0898)を保持している。この遺伝子は、他のVIPP1タンパク質に比べてC末端付近の配列が短いタンパク質をコードしている。我々は昨年度の年会で、glr0898遺伝子を保持し、内在のvipp1遺伝子(sll0617)が完全に破壊されたSynechocystis sp. PCC 6803の二重形質転換株を作製し、glr0898遺伝子がsll0617遺伝子の欠損を相補できることを示した。
今回、Glr0898タンパク質とSll0617タンパク質の特性と機能の詳細な比較を行うために、glr0898遺伝子を保持したvipp1二重形質転換株を用いた生理学的な解析と、生化学的手法によるGlr0898タンパク質の細胞内局在の解析を行った。さらに、VIPP1タンパク質の機能ドメインを調べるため、改変したVIPP1タンパク質をコードする遺伝子を用いたvipp1遺伝子破壊株の機能相補実験を行った。これらの結果に基づいて、Glr0898タンパク質のVIPP1タンパク質としての機能について議論する。