抄録
全ての光合成生物は効率的に光エネルギーを光合成に利用するために集光装置を進化させてきた。緑色植物における集光装置は葉緑体のチラコイド膜内在性のLHCIとLHCIIである。これらは光強度の変化に応じて捕捉する光エネルギーを調節するために再構築を行い、光エネルギーの捕集だけでなく余剰なエネルギーを熱として消去する役割を果たしており、植物の環境応答において重要な役割を担っている。本研究では集光装置の環境応答関連遺伝子の同定および分子機構の解明を目指した。今回我々はライン化されたシロイヌナズナの核コード推定葉緑体タンパク質遺伝子変異株コレクション(1290ライン)を用いて、異なる光条件で生育させた植物体の二次元クロロフィル蛍光解析を行った。これまでに約1000のT-DNA/Ds挿入ホモラインから光合成パラメータの異常な変異体の有無を調べた。NPQとΦIIに着目しいずれかの条件で少なくとも一つのパラメータにおいて有意水準68.3%で検定したところ、90の機能未知遺伝子への挿入ラインを含む合計620ラインが抽出された。その中からさらに遺伝子情報を考慮し約400ラインを抽出し、現在二次スクリーニングを行っている。また遺伝子情報に関しては、既に発表しているThe Chloroplast Function Database (Plant J 2010)を基にして解析を進めている。