抄録
低温環境下での光化学系II(PSII)の機能維持機構を明らかにする目的で、低温処理(4℃、1週間)によりPSII活性(Fv/Fm)が低下する突然変異株の単離を、二次元クロロフィル蛍光解析を用いて行った。その結果、低温処理によりFv/Fmが顕著に低下する突然変異株CEN2-19を単離した。CEN2-19は生育条件下において野生株と比較してクロロフィル量は低いが、Fv/Fmは正常な値を示す。しかし、低温処理によりFv/Fmが低下し、PSII反応中心タンパク質であるD1が顕著に減少した。CEN2-19とPSIIのアッセンブリー(lpa1)、修復(var2)が異常な変異株との二重変異株を作出したが、相乗的な効果は見られなかった。また、低温によりPSIにおいても反応中心タンパク質量の減少が見られた。さらにCytb6f複合体に条件的な機能欠損のあるpgr1との二重変異株を作成したところ、pgr1の異常が見られない生育条件下でも光合成電子伝達速度が低下し、個体の矮小化が見られた。これらの結果からCEN2-19の原因遺伝子は葉緑体タンパク質の機能維持に関与していることが示唆された。
CEN2-19の原因遺伝子の同定をポジショナルクローニングにより行ったところ、脂肪酸合成酵素をコードするKASIIIに一塩基置換を見出した。相補実験の結果、このKASIIIがCE2-19の原因遺伝子であると確認した。