日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

オオムギ品種エヒメハダカにおける鉄欠乏誘導性熱放散とその他のストレスにより誘導される熱放散の比較
樋口 恭子*加藤 克紀原嶋 千佳斎藤 彰宏三輪 睿太郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0495

詳細
抄録
一般に、鉄欠乏植物では、鉄を豊富に含んでいる光化学系が崩壊し、処理できない過剰の光エネルギーによって生育阻害が引き起こされる。しかし、オオムギ品種エヒメハダカは熱放散機構を誘導し、鉄欠乏時の光障害を緩和していること、またLhcb1タンパク質の減少を小さく抑えていること、鉄欠乏に弱いイネはこのような応答を示さないことを本研究室で明らかにした。(2009年名古屋大会)
鉄欠乏で誘導される熱放散が鉄欠乏に特異的なものかどうか検討するために、強光(1000~2000μmol photons/m2・sで、3時間または2週間)、低温(5℃で1週間)、メチルビオローゲン(5mM噴霧後24時間)、塩(NaCl100mMで2週間)ストレスなどの酸化ストレスにさらし、クロロフィル蛍光を光合成測定装置によって測定したが、鉄欠乏時のように非光化学消光が上昇するものは無かった。Lhcb1タンパク質の蓄積量は、鉄欠乏同様各ストレスで減少していたが、鉄欠乏に比べて減少幅は小さかった。従って、熱放散が効率よく誘導されるためにはLhcb1の蓄積量だけでなく、立体配置も重要であり、それらを調節する鉄欠乏特異的な分子機構が存在すると考えられる。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top