日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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高い葉温がCAM植物コダカラベンケイソウの炭酸固定に与える影響
*下田 陽一鈴木 祥弘
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p. 0496

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抄録
陸上植物の葉の温度(葉温)は、周囲の気温だけでなく、太陽からの輻射熱や蒸散に伴う気化熱などにより大きく変化する。昼間の蒸散が不活発なCAM(Crassulacean Acid Metabolism)植物の葉温は、輻射熱で高温となることがあり、植物に深刻な傷害が生ずる。これまでの研究で、蒸散の盛んなC3植物の葉温が気温とほぼ等しいのに対し、CAM植物のコダカラベンケイソウ(Kalanchoe daigremontiana Hamet et Perr.) の葉温は気温を10℃以上も上回ることがあり、その際、細胞質のpHが著しく低下し、植物体が白化枯死することを明らかにしている。CAM植物の葉内では、CO2を取り込む夜間に有機酸が蓄積し、CO2を光合成で昼間に消費する。この点に着目し、CAM植物の白化枯死の原因を解析した。
夜間の有機酸の蓄積は、蓄積する液胞の許容量で決定し、33℃以下の葉温では一定であった。高い葉温では蓄積速度は低下し、40℃以上では最大値の37%しか蓄積しなかった。一方、昼間の酸の消費は40℃以上で急激に低下し、ほとんど認められなくなった。夜間25℃と昼間40℃の天然の葉温環境を再現すると、夜間蓄積された酸が昼間消費されずに残り、同時に葉が白化枯死することが確認された。この結果は、昼間の有機酸消費能力の低下が白化に影響することを示唆していた。
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© 2010 日本植物生理学会
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