抄録
NRT2は硝酸イオンの吸収に関する輸送体で、植物あたり数分子種が存在している。ヒメツリガネゴケも8つのNRT2分子種をもつが、主要成分はNRT2;1~NRT2;4の4つである。一般にNRT2は高親和性の硝酸イオン輸送体とされるが、NRT2;1~NRT2;4の中では、NRT2;3の親和性は他に比べて低い。10mMという高濃度硝酸イオン条件で培養した原糸体ではNRT2;3 mRNAが全NRT2 mRNA発現量の80%以上を占めているが、このような原糸体の硝酸イオン吸収は培地へのアンモニア添加によって直ちに抑制される。この時、NRT2;3タンパク質の減少は観察されないので、NRT2;3の活性が翻訳後段階で制御されると結論した。植物のNRT2の多くに存在し、活性制御への関与が疑われている推定リン酸化部位のひとつをアラニン残基に置換したNRT2;3変異株S507Aを作成したところ、NRT2;3タンパク質が存在するにも関わらず、NRT2;3欠損株と同様にNRT2;3 mRNA以外のNRT2 mRNAの高発現を示した。以上のことから、NRT2;3のS507はNRT2;3の機能発現に関与する可能性が示唆された。