日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

シロイヌナズナ種子吸水過程の遺伝子発現におよぼす高温と内生アブシジン酸の効果
*渡邊 飛鳥今村 茜藤 茂雄矢野 健太郎川上 直人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0525

詳細
抄録
春に散布されたシロイヌナズナ種子の発芽は夏の高温で抑制されるため、生育に適切な秋に発芽することが可能となっている。私達は、高温はアブシジン酸(ABA)合成酵素遺伝子(主にNCED)の発現上昇を介してABA内生量を高め、ABAはジベレリン(GA)合成酵素遺伝子(主にGA3ox)の発現を抑制することによりGA合成を抑制することを明らかにした。本研究では、高温でより直接的に誘導される現象と、ABAにより二次的に誘導される現象を分けることを目的とし、野生型とABA欠損突然変異(aba2-2)種子を22℃と34℃で吸水させたときの遺伝子発現をマイクロアレイで解析した。K-means clusteringによる発現パターンの類似性解析から、遺伝子を17の群に分類したところ、温度で発現が変化する遺伝子群、温度とABAで発現変化する遺伝子群、吸水に伴って発現が変化する遺伝子群、発芽に伴って発現が変化する遺伝子群、系統特異的な発現を示す遺伝子群などに分けられた。ABA量の増加よりも前の段階で、高温で発現が高まる遺伝子を一つ選び、そのT-DNA挿入突然変異種子の発芽を調べたところ、野生型種子が発芽しない高温で発芽した。このような遺伝子は、温度の受容からABA 合成酵素遺伝子の発現誘導に至るまでの間で働く可能性が考えられた。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top