日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

単面葉の平面成長における、オーキシン濃度勾配の寄与についての研究
*糠塚 明山口 貴大塚谷 裕一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0541

詳細
抄録
一般的に被子植物の葉は、向背軸の極性に依存する機構で葉身が平面成長し、平たい形態を示す。一方、背軸面に相当する組織のみで葉身が構成される「単面葉」をもつ植物のなかには、葉の向背軸の極性が失われているにもかかわらず、平たい葉身を形成する種が多く存在する。すなわち単面葉では、葉の向背軸極性に依存しない独自のメカニズムの進化によって、葉が平面成長できるようになったという可能性が示唆される。この発生進化機構を解明するため、我々は系統的に近縁な2種のイグサ属植物、平たい単面葉をもつ「コウガイゼキショウ」および丸い単面葉をもつ「ハリコウガイゼキショウ」を用いた比較解析を行ってきた。
本発表では、単面葉葉身の平面成長性が内在性のオーキシン濃度勾配に依存する可能性を見出したので、報告する。コウガイゼキショウの芽生えにオーキシンあるいはオーキシン輸送阻害剤を処理した結果、葉身は平面成長性を失い、丸い構造へと変化した。一方これらの処理は、ハリコウガイゼキショウにおける葉身の放射相称性には影響を与えなかった。したがって、平たい単面葉では内在性オーキシンが特定の濃度勾配を形成しており、これが葉の平面成長の促進に寄与することが示唆された。現在我々は、単面葉の平面成長に関与する遺伝子についての解析を併せて進めており、これらの因子の発現とオーキシン濃度勾配との関係についても議論する。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top