抄録
植物の形態形成時やストレス応答時に重要な現象であるプログラム細胞死は様々な因子によって高度に制御されている。Bax Inhibitor-1 (BI-1) は生物間に広く保存された細胞死抑制因子である。シロイヌナズナのBI-1 (AtBI-1) は約26kDaの小胞体膜に局在する7回膜貫通タンパク質で、活性酸素種(ROS)の発生を伴う酸化ストレス誘導性細胞死を抑制することがこれまでに報告されている。また、AtBI-1のC末端に存在するcoiled-coil構造が細胞死抑制機能に必須であり、カルモジュリンと相互作用することも明らかとなっている。しかし、これまでAtBI-1が細胞死を抑制する分子機構については明らかとなっていなかった。
そこで、我々はAtBI-1が電子伝達因子シトクロムb5を介してスフィンゴ脂質脂肪酸代謝酵素と相互作用する可能性を見出した。スフィンゴ脂質は、2-ヒドロキシル化された非常に長い脂肪酸(2-ヒドロキシ超長鎖脂肪酸)を有することが特徴であり、その合成に密接に関与するスフィンゴ脂質脂肪酸2-ヒドロキシラーゼ(AtFAH)及び、超長鎖脂肪酸縮合酵素(AtELO)がAtBI-1と相互作用することが示唆されている。今回の発表では、AtFAH及びAtELOが合成するスフィンゴ脂質脂肪酸とAtBI-1との関係について報告したい。