抄録
植物遺伝子の機能解析ツールとして近年頻繁に使用されているタバコ茎えそウイルス(TRV)ベクターを用いたウイルス誘導性遺伝子サイレンシング(VIGS)により、モデル植物であるシロイヌナズナにおいても内在性遺伝子の発現抑制が可能であるが,これまでに報告されている手法では多検体を均一に処理することは困難である。そこで、シロイヌナズナの均一化したcDNAライブラリーを導入したTRVベクターを用いたVIGS(TRV-VIGS)による表現型を指標にしたスクリーニングを効率的に行うために,大規模スクリーニングができる簡便で安定したサイレンシングの手法の確立を行った。まず8種類のシロイヌナズナのエコタイプにおけるTRV-VIGSの効果を検証したところ、全てでサイレンシングの表現型を観察することができた。また,高効率で多検体の植物に同時にサイレンシングを誘導する実験系を、バキュームインフィルトレーション法を用いて確立できた。この手法を用いて既知の細胞死関連遺伝子であるCAD1のVIGSを行ったところ,cad1変異体と同じ表現型が観察されたことから,この手法を利用したスクリーニングにより,細胞死に関わる遺伝子を効率的に単離する事が可能であると示唆された。これらの確立した実験系を用いて実際に遺伝子スクリーニングを行ったところ,これまでに細胞死に関連するという報告のない複数の遺伝子を同定することができた。