抄録
冬一年生植物は、一年目は栄養生長を行い茎は伸長せずロゼット葉を展開する。二年目に生殖生長に移行すると、急激な茎の伸長生長(抽だい)を起こし開花に至る。抽だいには植物体が低温を経験した後に長日条件におかれることが必要である。ジベレリンが重要な働きをしていることが知られているが、過去の報告から植物体中のジベレリン内在量の増加が抽だいを引き起こしているとは考えにくく、ジベレリンに対する感受性が変化するのだと考えられている。そこで、植物体中にジベレリンに対する感受性を決定し、抽だいを制御している生理活性物質が存在していると考え、その物質の単離・同定をホウレンソウを用いて試みることとした。
抽だいを完全に抑制するため、日長が短くなる夏に圃場でホウレンソウ(品種:アクティブ)を栽培し、ロゼット型の状態で植物体を収穫した。根を除いた植物体をエタノールで抽出し、ホウレンソウあるいはチンゲンサイの幼植物を用いたin vitroの抽だい阻害活性のバイオアッセイに供したところ、抽出物には強い抽だい阻害活性が認められた。これは、ホウレンソウ植物体中にはロゼット型の維持に寄与している生理活性物質、つまり抽だい阻害物質が存在していることを示唆している。そこで、この抽だい阻害物質の正体を明らかにするために、各種カラムクロマトグラフィーにて分離、精製を進めている。