日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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低窒素条件下で生育させたキュウリのクロロフィルの増加におけるアブシジン酸の役割
*下田 洋輔霜村 典宏岡 真理子
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p. 0552

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抄録
我々は、植物を低窒素条件下でアブシジン酸(ABA)を処理するとクロロフィル含量が高いレベルで維持されることを報告してきた。クロロフィル含量はクロロフィルの合成と分解により調節されることから、低窒素条件下でのクロロフィル生合成と分解に関わる遺伝子の発現量に対するABAの影響を調べた。クロロフィル生合成に関わるいずれの遺伝子も無処理区と比較してABA処理区において発現量が増加した。一方、クロロフィル分解に関わる遺伝子は、無処理区と比較してABA処理区において発現量が減少していた。また、クロロフィルは葉緑体のチラコイド膜のタンパク質と結合して複合体を形成していることから、低窒素条件下においてクロロフィルa/b結合タンパク質の遺伝子発現量を調べたところ、無処理区では日数の経過とともに発現量が減少していたが、ABA 10-5 M処理区では発現量の減少は認められなかった。電子顕微鏡を用いて葉緑体構造を観察したところ、無処理区ではチラコイド膜の配列の乱れが見られたが、ABA処理区ではその構造が維持されていた。以上の結果から、低窒素条件下で生育させたキュウリにおいてはABAによりクロロフィル生合成が促進されるとともにクロロフィル分解が抑制されることによりクロロフィル含量が高く維持されることが示唆された。また、クロロフィルが葉緑体中で結合タンパク質と結合し、安定に保持されている可能性が示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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