抄録
サイトカイニンは植物の発生や生長段階のさまざまな過程の制御に関わる植物ホルモンである。活性型サイトカイニンであるトランスゼアチン(tZ)の生合成経路では、まず前駆体としてヌクレオチド体が合成されたのち、リボースリン酸がはずれtZになることで活性をもつ。リボースリン酸をはずす活性化経路には脱リン酸および脱リボースからなる二段階経路と、脱リン酸リボースを一段階の反応でおこなう直接経路の二つの経路が知られている。しかしながら二つの経路の生理的役割の違いは明らかにされていない。本研究では直接経路に関与するLONELY GUY (LOG)ファミリー遺伝子の機能欠損変異体を解析することによりサイトカイニン活性化経路の生理機能の解明を試みた。シロイヌナズナにはLOGファミリー遺伝子(AtLOG1-5, 7, 8)が7つ存在する。これらのT-DNA挿入変異体を同定し、さまざまな多重変異体を作出したうえで表現型の変化を観察した。結果、各単変異体では野生型と比べ表現型に違いが見られないもののlog2log7, log3log4log7などの多重変異体はサイトカイニンに依存した側根数の減少が抑制された。log3log4log7では花茎の成長が野生型に比べ遅延するなどの違いが見られた。現在AtLOG1,2,3,4,7五重変異体を作出し表現型観察および安定同位体標識化合物を用いたトレーサー実験を進めている。