抄録
3-デオキシアントシアニンはコケ、シダ、植物の限られた種に存在する希なアントシアニン色素である。イワタバコ科植物のシンニンギア(Sinningia cardinalis、ブラジル原産)は花弁に大量の3-デオキシアントシアニン(アピゲニニジン-5グルコシド、ルテオリニジン-5グルコシド)を蓄積することが報告されている。我々はシンニンギア花弁から3-デオキシアントシアニジンに対する配糖化酵素(遺伝子)を単離し、解析を進めている。UGT88ファミリーをターゲットとしたデジェネレートPCRにより、5つの候補遺伝子(ScUGT1~5)を単離した。系統樹解析及び発現解析により、3つの遺伝子に絞り込むことができた。さらに、無細胞翻訳系による組換えタンパク質を用いた酵素活性解析から、ScUGT5において3-デオキシアントシアニジンの5位の配糖化活性を有することが確認された。大腸菌で発現させたHisタグ融合タンパク質を用いてScUGT5酵素諸性質の解析を行った。ScUGT5はUDP-グルコース存在下で3-デオキシアントシアニジンに対する配糖化活性を示したが、3-ヒドロキシアントシアニジンやフラボン、フラボノールなどに対しては活性を示さなかった。また、ScUGT5はアピゲニニジンよりルテオリニジンに対して高い基質特異性を示した。現在、モデル植物を用いて本遺伝子による花色改変を目指して研究を進めている。