抄録
翻訳開始因子eIF6は真核生物に広く保存されたリボソーム大サブユニット生成に関与する生存に不可欠な因子である。前回、eIF6遺伝子が酵母や動物では1コピーであるのに対して、イネとシロイヌナズナのゲノム上では2コピー(Os-eIF6;1とOs-eIF6;2及びAt-eIF6;1とAt-eIF6;2)存在していること、At-eIF6;1は生存に必須な遺伝子であるがAt-eIF6;2は必須ではないこと、硝酸アンモニウムの添加はOs-eIF6;2の発現のみを選択的にかつ一過的に上昇させたことを報告した。今回、At-eIF6;1遺伝子を含むゲノムDNA断片(転写開始点より上流約0.7 kbの位置から翻訳終止コドンまでの約2.5 kb)を用いてAt-eIF6;1との融合タンパク質としてGUSを発現させることにより、At-eIF6;1遺伝子の発現部位の解析を行った。その結果、At-eIF6;1遺伝子の発現は、発生中の胚、芽生え、雄しべ等、分裂が盛んな部位で強いことが判明した。この結果は、At-eIF6;1が胚発生に必須であることと一致した。現在、異なる発現制御を受けるイネとシロイヌナズナの2コピーのeIF6遺伝子が異なる生理的機能を担っている可能性を検討するため、GST-eIF6融合タンパク質を用いたLC/MS解析により相互作用するタンパク質を検討しており、その結果も合わせて報告する予定である。