抄録
植物Lipoxygenase (LOX)は、不飽和脂肪酸の酸化反応を担う酵素である。LOX反応を初発として生合成される代謝産物は、ジャスモン酸などの植物病害応答に関与する生理活性物質に変換されることから、病害応答においてLOXは重要な機能を果たしていると考えられている。本研究では、コケ植物におけるLOXの生理機能を明らかにすることを目的としてゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.)よりLOX遺伝子と相同性を示す遺伝子の単離を行ない、その機能を調べた。これまでにESTライブラリーより独立した3つのLOX相同遺伝子の部分配列を取得し、5’-,3’-RACE法により全長と予想される塩基配列を明らかにした。各遺伝子は2,868、 2,958、 2,868 bpからなり、それぞれMpLOX1、MpLOX2、MpLOX3と命名した。MpLOX3については大腸菌による組換えタンパク質を作出し、MpLOX3と基質脂肪酸との反応生成物をLC/MS/MSにより検出した。その結果MpLOX3はエイコサペンタエン酸や、アラキドン酸との反応性が高いことが分かった。またMpLOX3との反応生成物には基質脂肪酸の15位の炭素原子に酸素を添加した生成物が顕著に認められたことからMpLOX3が15-LOX活性を有することが明らかとなった。本研究は、生研センター異分野融合研究事業によるものである。