抄録
高等植物の葉緑体とシアノバクテリアは共に、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)を主要膜構成成分としているが、MGDGの合成経路は両者で異なる。高等植物ではMGDG合成酵素が、シアノバクテリアではモノグルコシルジアシルグリセロール(MGlcDG)合成酵素が、それぞれのMGDG合成経路を担っている。
緑藻クラミドモナスは、植物型MGDG合成酵素(MGD)とシアノバクテリア型MGlcDG合成酵素(MGlcD)の両遺伝子のホモログを有するが、クラミドモナス膜画分ではUDP-ガラクトースを基質とした高等植物型のMGDG合成が行われていることが分かった。そこで我々は、クラミドモナスのMGD遺伝子(CrMGD)を単離し、大腸菌で発現させたリコンビナント酵素の生化学的解析を行い、キュウリMGD(CsMGD)の酵素特性と比較した。
CrMGD、CsMGD共に、至適pHが7.5付近であり、MgCl2、CaCl2の添加によりMGDG合成活性が増加し、またCuCl2、ZnCl2の存在下では活性が阻害された。一方、CsMGDではホスファチジン酸による活性化が見られたが、CrMGDでは見られなかった。これらの結果より、CrMGDの活性制御が高等植物MGDのそれとは異なる可能性が示唆された。