抄録
H+-pyrophosphatase (H+-PPase; EC 3.6.1.1) は核酸やタンパク質、セルロースなど高分子合成反応の副産物であるピロリン酸の加水分解に共役してH+を輸送するプロトンポンプである。植物においてはI型H+-PPaseが液胞膜に多量に存在し、V-ATPaseと共に液胞の酸性化に寄与している。しかし、組織免疫染色において組織によっては細胞膜にも一部存在し、アポプラストの酸性化によりオーキシンの輸送に間接的に関わっているという報告もなされており、分化した細胞各々での局在性や環境に対する応答性などを精査する必要がある。当研究ではシロイヌナズナH+-PPaseであるAtVHP1/AVP1において、細胞質側に配向しているループにsGFPをつないだコンストラクトを作成し、own promoter下で植物に形質転換させた。VHP1-sGFPは液胞膜と共に、バルブ状構造と思われる液胞内の動的な小胞に存在していることが明瞭に観察された。組織局在では、植物体全体に蛍光が認められたが、特に根端、維管束、花粉、吸水種子において強い蛍光が見られ、高分子合成反応が盛んな組織において特に活発であるというこれまでの報告と一致した。現在、様々な組織や条件における細胞内局在や発現量の違いを解析中であり、破壊株vhp1の表現型と併せてH+-PPaseの生理的役割について議論したい。