抄録
スミレは古来より紫花地丁と呼ばれる漢方薬として用いられてきた。これはスミレ属の中のノジスミレやコスミレ、アカネスミレおよびスミレなどの全草を乾燥させたものであり、解毒や消腫、静熱など様々な効果が知られている。我々は、これまで日本産スミレが含有するアントシアニンやフラボノイドを指標とした化学分類やアレロパシーの研究を行ってきた。スミレ属のアントシアニンやフラボノイドには共通性があり、またこれらは種により特徴的な分布が認められる。一方、漢方における紫花地丁は異なるスミレ数種を同一視しているが、これらの機能性成分であるフラボノイドの調査はノジスミレにおいてvicenin-2やisoorientinの報告があるのみで、他種における詳細なフラボノイド調査は行われていない。そこで、紫花地丁に用いられる代表的なスミレ3種(ノジスミレ、コスミレ、アカネスミレ)について、そのフラボノイド成分のより詳細な分析とそれぞれの機能について調査した結果、コスミレからwogonin配糖体を主要フラボノイドとして見いだした。