抄録
植物は、ストレス応答や形態形成においてNADPH oxidaseを活性化し活性酸素種(ROS)を積極的に生成するが、その制御機構は不明な点が多い。我々は、植物NADPH oxidaseの酵素本体rbohをヒトHEK293T細胞で発現させる異種発現系を構築し、シロイヌナズナAtrbohDの活性制御機構を明らかにした(Ogasawara et al. 2008)。イネの病害抵抗性に重要な役割を持つイネOsrbohB の制御には低分子量Gタンパク質OsRac1等の関与が示唆されている (Wong et al. 2007)が、活性発現の分子機構は未解明である。OsrbohBを発現させたHEK293T細胞に、Ca2+イオノフォアを処理すると、一過的なROS生成活性が観察された。種々の部位特異的突然変異体を解析した結果、Ca2+の結合が予想される2つのEF-hand領域のうち、最初のEF-hand領域がCa2+を介した活性化に重要であることを明らかにした。一方,プロテインホスファターゼ阻害剤カリクリンA処理により持続的なROS生成活性が観察され,カリクリンAとCa2+イオノフォアの連続処理により相乗的な活性化が見られた。以上からOsrbohBのROS生成活性は,EF-hand領域へのCa2+結合及びタンパク質リン酸化により相乗的に活性化されることが明らかとなった。