日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

高温登熟下のイネ籾の熱ショック関連遺伝子発現と品質との関連
田中 浩平岸田 学Phan Thuy石橋 勇志湯淺 高志*井上 眞理
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0668

詳細
抄録
登熟期における高温がイネの白未熟粒の発生を引き起こすことが問題となっているが、籾の高温感受性機構は必ずしも解明されていない。本研究では、極早生の水稲(Oryza sativa L.)として高温非感受性品種‘ふさおとめ’と感受性品種‘初星’のポット植えの苗を用い、籾に対する高温の影響を調べた。‘ふさおとめ’は7月23日、‘初星’は7月26日に圃場で出穂を確認後、ファイトトロン(25℃、30℃)に移した。‘初星’は‘ふさおとめ’に比べて、籾の乾物重、生鮮重ともに高温により低下し、特に登熟初期(開花後7,14日)では、高温の影響を強く受けた。25℃区における完全米率は‘ふさおとめ’で76.0%、‘初星’で76.9%と有意な差はなかったが、30℃では、前者の22.8%に対し、‘初星’では5.1%を示し、高温により著しく低下した。そこで、‘ふさおとめ’と‘初星’の籾を用いてRT-PCRにより登熟初期における熱ショック関連遺伝子の発現変動を調べた。高温耐性を示した‘ふさおとめ’の籾では、30℃処理により開花後7、14日目に、特にHSP90ER、HSP26、CaPDIの発現レベルが高いことが認められた。このことから、登熟初期における熱ショック関連遺伝子の発現のレベルの違いが籾の高温耐性の獲得に関与している可能性が示された。デンプン合成・分解関連遺伝子の発現とも合わせて考察する。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top