日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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グルタチオン還元酵素を過剰発現させたシロイヌナズナのアルミニウムストレス耐性
*殷 俐娜大野 早綾山本 祥平河野 治王 仕穏田中 浄
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p. 0676

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抄録
アルミニウムストレスは植物細胞で活性酸素種の生成を通して酸化ストレスを引き起こすことが広く報告されている。グルタチオン(GSH)は酸素ストレスから細胞を保護する細胞内抗酸化物質である。グルタチオン還元酵素(GR)は還元型グルタチオン(GSH)の再生に重要な酵素である。アルミニウムストレスへのGRの保護効果を調べるために、シロイヌナズナ細胞質型GR (accession No. At3g24170) を過剰発現した形質転換シロイヌナズナを作出した。GR形質転換植物はアルミニウムストレス下で野生植物と比べて、より良い根の伸張、より低い過酸化水素量、より低い過酸化脂質生成を示した。24時間アルミニウム処理後、形質転換植物と野生植物の間にアルミニウム集積に差は無かったが、GR形質転換植物は、野生植物よりも、より高いGR活性とアスコルビン酸ペルオキシダーゼ活性、より高いGSHとアスコルビン酸レベルを示した。さらに、アルミニウムストレス下で形質転換植物と野生植物の根においてスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ(CAT)、デヒドロアスコルビン酸還元酵素(DHAR)活性の差は無く、GRの過剰発現はこれらの抗酸化酵素活性に影響を与えないことを示している。これらの結果はGR過剰発現は抗酸化能力を改善しアルミニウム耐性の向上をもたらすことを示している。
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© 2010 日本植物生理学会
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