日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ライムギ由来MATE遺伝子(ScFRDL1とScFRDL2)の単離と機能解析
*横正 健剛山地 直樹馬 建鋒
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p. 0679

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抄録
Multidrug and toxic compound extrusion(MATE)は排出型の輸送体で生物界に広く存在する。近年、いくつかの植物のMATE遺伝子は外向きのクエン酸輸送タンパク質をコードすることが報告されている。
ライムギはAl耐性の強い種とされその耐性は根からの有機酸(リンゴ酸、クエン酸)分泌に由来する。しかし分泌に関与する遺伝子は単離されていない。本研究ではライムギから2つのMATE遺伝子(ScFRDL1,ScFRDL2)を単離し機能解析を行った。まず、オオムギやイネのMATE遺伝子をもとにライムギMATE遺伝子の完全長cDNA配列を決定した。単離されたScFRDL1はオオムギのAl活性型クエン酸トランスポーターHvAACT1とアミノ酸配列で94%、ScFRDL2はイネのAl誘導型MATE遺伝子OsFRDL2と80%の相同性を示した。次に、遺伝子の発現解析を行った。ScFRDL1はAlによる発現の誘導は受けず、鉄欠乏に誘導された。また根の基部側では中心柱に局在していた。一方、ScFRDL2はAlにより発現が誘導され、根からのクエン酸分泌量もこの発現と同様に増加していた。しかし、鉄欠乏による影響は受けなかった。これらの結果からScFRDL1はクエン酸を導管に排出し地上部への鉄輸送に、ScFRDL2はAlによる根圏へのクエン酸分泌に関与することを示している。
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© 2010 日本植物生理学会
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