抄録
オオムギは他のイネ科植物(イネ、ソルガム)に比べ低い鉄含量で緑色と生育を維持できる。このことはオオムギが地上部での鉄利用効率に優れていることを示す。当研究室ではオオムギが鉄欠乏により発生する光障害を回避する機構を誘導し、光合成機能を維持することを示した(2009年名古屋大会)が、細胞内での鉄そのものの分配にもオオムギ特有の機構があるのかどうかは明らかではない。我々は、鉄分配に関わる因子の1つとして地上部の三価鉄還元活性に着目し、鉄欠乏誘導性の有無からオオムギ地上部鉄欠乏耐性への関与を検討している。オオムギの葉緑体包膜には三価鉄還元活性が存在することがすでに報告されているが、オオムギ葉から単離したプロトプラストの原形質膜にも活性が存在した。その活性は葉緑体包膜と同様に光依存性であった。クロロシス葉から単離したプロトプラストの三価鉄還元活性は、プロトプラストあたりでは対照区に比べ減少したが、クロロフィルあたりでは対照区より活性が高かった。現在、ソルガムにおいても活性の有無と鉄欠乏による誘導性を調べている。また、オオムギとソルガムの葉緑体包膜の三価鉄還元活性の鉄欠乏誘導性も比較し、三価鉄還元活性とオオムギの高い鉄利用効率との関連を議論する予定である。