抄録
当研究室では、ナス科のモデル植物であるベンサミアナタバコの成熟個体がジャガイモ疫病菌に抵抗性であるが、若齢個体は罹病性であることをこれまでに見いだした。またウイルス誘導型ジーンサイレンシング法(VIGS)を用いて、疫病菌抵抗性にはR遺伝子の安定化因子(SGT1、HSP90)、3量体型および低分子量Gタンパク質(Gβ、RAC)、サリチル酸合成酵素(ICS1)およびエチレン情報伝達因子(EIN2)、エチレン経路に発現制御されるファイトアレキシン生合成系酵素(EAS、EAH)などが必須であることを明らかにした。本研究では、疫病菌に対するベンサミアナタバコの新規防御関連遺伝子を単離するため、VIGS法を用いた網羅的探索系を構築した。疫病菌由来のタンパク質エリシターであるINF1をベンサミアナタバコ葉に処理し、処理1-12時間後の葉組織から得られたRNAより、サブトラクション法を用いてINF1誘導性遺伝子cDNAの濃縮を行った。得られたcDNAを標準化した後VIGS用ベクターに組み込み、平均長約700 bpのランダムなcDNA断片を含むサイレンシングライブラリーを作製した。本ライブラリーを用いてサイレンシング株を作出したところ、植物体の矮化、葉の黄化や細胞死が引き起こされた株が多数得られた。さらに疫病菌抵抗性が低下するサイレンシング株の選抜を行っており、その結果についても報告する。