抄録
細胞は栄養飢餓ストレスに応答して自らの構成成分を分解し、その分解産物を新しい構成成分の再合成やエネルギー獲得のために利用することが知られている。このような分解メカニズムの1つであるオートファジーは、栄養飢餓条件下における細胞内タンパク質の分解に寄与することが知られている。一方、生体膜の主成分であるリン脂質もタンパク質と同様に栄養飢餓条件下で分解されるが、私たちはタバコ培養細胞(BY-2)におけるリン脂質の主な分解メカニズムがオートファジーではないことを明らかにしてきた。
本研究では、BY-2細胞におけるリン脂質の分解メカニズムを明らかにするため、蛍光色素BODIPYで標識された脂肪酸アナログを細胞に取り込ませ、蛍光顕微鏡による観察、および細胞から抽出したリン脂質の蛍光量測定を行った。それらの結果から、細胞内リン脂質の約80 %が24時間以内に分解されること、またリン脂質の分解産物が最終的に液胞に蓄積することが示唆された。本発表では、上記の結果とともに、現在解析中であるリン脂質分解産物の同定、および液胞の酵素阻害とリン脂質分解の関係についても発表する予定である。