抄録
我々は、イネ内在性レトロトランスポゾンTos17が培養細胞で特異的に活性化することを利用して、これまでに5万系統のTos17挿入変異系統(ミュータントパネル)を作出してきた。Tos17挿入変異系統は、すでに多くの研究者に利用されているところであるが、大規模表現型解析から、ミュータントパネル系統は、Tos17の挿入によらない変異が多く存在することが予想されていた。これらの変異の原因を探るため、昨年度より、次世代シーケンサーを用いてミュータントパネル系統の全ゲノム解析を進めている。これまでに、独立の2系統に関して、それぞれゲノムの5倍程度の塩基配列を取得した。得られた塩基配列のうち13%の配列にイネのゲノム塩基配列に対してミスマッチが存在した。これらのミスマッチから正しい変異を検出するため、検証プログラムを新たに作成した。最終的に、100~200ヶ所の変異が絞り込まれた。絞り込まれた変異の一部をサンガー法で確認したところ、9割程度の変異は、実際に変異していることがわかった。M1世代に換算して、少なくとも1Mbに1ヶ所は培養によって変異が起こったと予想している。この方法を発展させれば、表現型に関係する変異の同定、あるいは、マッピングが可能になると考えられるので、さらなる改良とデータの検証を進めているところである。