抄録
植物の光化学系II超複合体は二量体のコア複合体の周囲を集光アンテナ(LHCII)が取り囲む形で構成されており(PSII-LHCII)、その構造は電子顕微鏡を用いた単粒子解析により報告されてきた。これまで、ホウレンソウやシロイヌナズナなど高等植物で三量体LHCIIが片側2個ずつ(計4個)結合した構造が観察される一方、緑藻クラミドモナスでは三量体LHCII が片側1個ずつ(計2個)結合した構造が観察されている。この違いはコア複合体と三量体LHCIIをつなぐ単量体LHCII(CP24、CP26、CP29)のうち、高等植物で見られるCP24が緑藻クラミドモナスには存在しないためであると考えられてきた。本研究では緑藻クラミドモナスのチラコイド膜可溶化条件を比較検討するなどにより、PSII-LHCII構造について再検討を行った。可溶化チラコイド膜をショ糖密度勾配超遠心法により分離し、得られたPSII-LHCII画分を酢酸ウランによってネガティブ染色した。単粒子解析の結果、高等植物と同様に三量体LHCIIが片側2個ずつ(計4個)結合した粒子が観察された。このCP24を必要としない新しいPSII-LHCIIの構造の詳細と、さらにLHCII変異株の解析結果を併せて報告する。