抄録
高等植物のPsbPタンパク質は、光化学系II(PSII)においてCa2+やCl-の結合とMnクラスターの安定化に関与する。これまでに単離PSII膜を用いた再構成実験とFTIR分析によって、PsbPの解離に伴ってPSIIのMnクラスター周辺の構造が変化し、PsbPの再結合によってその構造変化が回復すること、また、その構造変化にはPsbPのN末端が必須であることが明らかとなっている (Tomita et al. 2009, Biochemistry 48, 6318-25)。一方で、PsbPのC末端側ドメインの機能に関しては明確ではない。本研究では、PsbPの立体構造に基づいてPsbPのC末端領域にアミノ酸置換を導入し、変異PsbPタンパク質の機能をPSII活性再構成実験、及び、FTIRで評価した。その結果、生物種間で保存されたPsbPのC末端側His残基をAlaに置換した変異タンパク質(PsbP-H144A)において、酸素発生活性の回復能、及び、FTIRで検出される構造変化が大きく低下することを認めた。PsbP-H144AはN末端欠損型PsbPと異なり、野生株と同様にPSIIに結合し、PsbQ存在下でもPSII活性が回復しなかった。従って、PSIIにおけるイオン保持能回復には、PsbPのC末端領域も重要な役割を持つことが判明した。