抄録
植物は、光合成電子伝達を通して光エネルギーを化学エネルギーに変換している。電子伝達経路にはリニア電子伝達経路とサイクリック電子伝達経路の2種類が知られており、緑藻クラミドモナスにおいては、それらは光環境変化に伴うステート遷移により切り替えられる。フェレドキシンNADP酸化還元酵素(FNR)は光化学系I(PSI)からフェレドキシンを通じて電子を受け取り、ステート1ではNADP+の還元(リニア電子伝達)、ステート2ではプラストキノンプールの還元(サイクリック電子伝達)に関与することが示唆されている。しかし、ステート1やステート2においてFNRがどこに存在し、どのように働きかけているのかは明確ではない。そこで本研究では、緑藻クラミドモナスの野生株を用いてステート1、ステート2それぞれの条件下におけるチラコイド膜上のFNRの位置の特定を行った。その結果、ステート1においてはPSI複合体画分(A3)に存在し、ステート2においてはPSI/LHCII超複合体画分(A4)に存在することが示された。現在、Cytb6f欠損株(Fud6)やPSI欠損株(ΔPSI)を用いて行っている実験の結果も合わせて報告し、光合成電子伝達経路切り替えにおけるFNRの役割について議論する。