日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シアノバクテリアFoF1におけるγおよびεサブユニットのATP加水分解制御
*小林 真理砂村 栄一郎紺野 宏記久堀 徹
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p. 0762

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抄録
ATP合成酵素(FoF1)は、ATPの合成活性に加え加水分解活性をもつ。光合成生物では、暗期において光合成によるプロトン勾配形成が途絶え、逆反応であるATP加水分解が進行する可能性がある。εサブユニットはATP加水分解を阻害する内在性の阻害サブユニットだが、葉緑体やシアノバクテリアのεは他の生物に比べ阻害効果が高いと報告されている。さらに、葉緑体やシアノバクテリアの特徴として、γサブユニットに30~40アミノ酸の挿入がある。シアノバクテリアのFoF1におけるεとγサブユニットの生理的役割を明らかにするため、εサブユニットのC末端ドメイン欠損株(εΔC株)、γサブユニットの挿入配列欠損株(γΔ198-222株)、およびこれらの二重変異株をSynechocystis sp. PCC 6803を用いて作製し、変異株の表現型の解析を行った。
各変異株の細胞内ATP量は明暗条件に対して異なる変動を示し、特に二重変異株で暗所におけるATP量の低下が顕著であった。また、明暗周期条件での変異株の増殖速度を比較した結果、γΔ198-222株とεΔC株は野生株と同等であったが、二重変異株では遅れが見られた。これらの現象とこれまでに明らかにしたεとγサブユニットの機能を総合すると、シアノバクテリアFoF1のATP加水分解制御には両サブユニットが補完的に働いていると考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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