日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シアノバクテリアデンプンの物性と構造
*小野田 美穂鈴木 英治Colleoni ChristopheBall Steven藤田 直子中村 保典
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p. 0765

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抄録
ほとんどのシアノバクテリアは光合成産物として可溶性の多糖であるグリコーゲンを生産する。しかし、一部の単細胞、窒素固定種ではデンプン様の不溶性多糖を生産することが見出された。本研究では、シアノバクテリアCyanobacterium sp. NBRC 102756株、Cyanothece sp. ATCC 51142株、CLg1株 (未同定株) を材料とし、各株からPercoll密度勾配遠心法により貯蔵多糖を精製した。走査型電子顕微鏡により、いずれの標品においても直径約 0.5 μmの小粒が観察された。多糖分子内のα-1,6結合を酵素的に切断した後、キャピラリー電気泳動により鎖長分布を解析した結果、各株由来の多糖において、グリコーゲンには見られないDP (重合度) ≥ 37の長鎖が認められた。この長鎖はゲル濾過解析により、アミロペクチンのクラスター構造単位を連結するB2鎖以上の画分として検出された。この長鎖画分の比率は株間で有意に異なっていた。さらに、CLg1株においてはアミロース様の直鎖成分が検出された。示差走査型熱量測定により、各標品について明確な糊化ピーク温度が認められ、この値が高いほど短鎖比率が低いという相関が見られた。以上、シアノバクテリアに見出される不溶性多糖はデンプンに酷似した構造、物性を有し、その特性は種間で多様であることが示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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