抄録
CRES-T法(Chimeric REpressor gene-Silencing Technology)は、任意の転写因子に転写抑制ドメイン(SRDX)を連結する事により転写抑制因子に改変し、機能が重複した転写因子が存在してもターゲット遺伝子の発現を効率よく抑制することが可能である。しかし、導入遺伝子によっては、キメラリプレッサーの過剰発現により生育不良や種子の稔性低下がみられる。そこで、本研究では、遺伝子組換え花きの実用化に向け、導入遺伝子の発現を時・空間的に制御する技術の開発を行なった。酵母のGAL4転写因子の転写システムを利用し、エタノール誘導または熱ショック誘導プロモーターによりGAL4SRDXを適切な時期に発現させ、35S::GAL4 UAS制御下で過剰発現している導入遺伝子の発現を一過的に抑制させるベクターを構築した。導入遺伝子としては、八重咲きに関わるAGのキメラリプレッサー(AGSRDX)及びAGのアサガオ相同遺伝子DUPLICATE(DP)のキメラリプレッサー(DPSRDX)をシロイヌナズナ及びアサガオに導入した。35S::DPSRDX導入アサガオは再分化中に成長が停止し枯死してしまうが、再分化中にGAL4SRDXを用いて発現抑制することにより正常に個体再生し、八重咲きのアサガオを咲かせる事に成功した。この技術は基礎研究や育種への応用が期待される。