抄録
我々は重イオンビーム照射による植物の突然変異誘発技術の開発を行っており、変異誘発効率を評価する指標として葉緑体変異体を用いている。
日本型イネ(日本晴)種子に炭素ビーム(LET 22.5 keV/μm, 20 Gy)を照射したM 2 集団から、葉緑体形成不全突然変異体22-4Yを単離した。22-4Yは第4葉期までは白葉が形成されるが、生育するに従い緑化し、第5葉以降は野生型とほぼ同様の緑葉が抽出する緑変白苗変異体であった。生理学的解析により、22-4Yは既知の緑変白苗変異体virescent-1, 2, 3と同様に温度感受性を示し、25℃で生育すると白葉を形成するが、30℃では緑葉となった。遺伝学的解析により、22-4Y変異は核由来の1遺伝子座劣性変異であることが示された。マップベースクローニングを行った結果、その原因遺伝子は第5染色体の72cMから80cM周辺に座上していることが明らかになった。この領域には緑変白苗変異virescent-10の存在が示唆されているが、その原因遺伝子は報告されていない。我々は22-4Y変異の原因遺伝子はVIRESCENT-10であると推測し、遺伝子の同定を進めると共に、温度変化による生理学的解析を行っている。