抄録
葉緑体は光エネルギー変換の場として地球上の生命に必須な光合成を行うだけでなく、アミノ酸・脂質・植物ホルモン合成など植物の生長に重要な役割をする。葉緑体はde novo合成されないので、独自の分裂増殖機構を持っており、それらの構成因子がシロイヌナズナのarc変異体などにより明らかにされつつある。一般に、分裂装置に欠損がある変異体は葉緑体が肥大化する。一方で、得られた変異体の多くは正常に生育するので、分裂の重要性については不明の点が多い。これらの疑問を調べるため、イネにおける巨大葉緑体を持つ変異体の単離を試みた。本研究では、イネ日本晴再分化個体から得られた粗粒変異体をEMS処理したM1系統を用いた。インタクトなイネ葉での葉緑体観察は困難なため、自然光下の温室で生育させた各個体8日後の幼苗の第3葉からプロトプラストを調整し、葉緑体を観察した。EMS処理M1、162系統合計2,170個体をこの方法により観察し、野生型と比べて明らかに葉緑体が大きくなる変異体gicを分離する1系統を単離することができた。この変異体は現在育成中で、マッピングに用いるための交雑F2系統などを準備しているが、シロイヌナズナのarc変異体と同様に明確な生育上の違いを示していない。以上の結果も含め、現在解析を行っているgicの性質について報告する。