抄録
グルコシノレート類は植物の防御機能において抗食害虫物質として機能するアブラナ科特異的な二次代謝産物である.グルコシノレートはその生合成前駆体となるアミノ酸の種類によりトリプトファン由来のインドールグルコシノレートとメチオニン由来のアリファティックグルコシノレートに大別される.これまでに,グルコシノレート生合成に関与するMYB様転写調節因子が特定され機能解析が進められてきている.MYB38/ATR1,MYB51,およびMYB122はインドールグルコシノレート生合成に関与し,MYB28,MYB29,およびMYB76はアリファティックグルコシノレート生合成を制御する.これらの転写調節因子は細胞傷害,病原体感染,昆虫食害等に対するストレス応答として発現調節され,それぞれが協調的・拮抗的に機能することが示唆されている.
本研究では病原体感染時におけるグルコシノレート生合成制御MYB転写調節因子間の相互作用に関わる新規転写調節因子を同定した.当該転写調節因子は病原体感染により顕著に発現誘導され,そのT-DNA挿入変異系統ではグルコシノレート生合成に関わるMYB転写調節因子の発現低下が見られた.今回,グルコシノレート類の蓄積プロファイルと遺伝子発現プロファイルから病原体感染時のグルコシノレート生合成と本転写調節因子の関係を議論する.