抄録
植物ホルモンであるジャスモン酸メチル(MeJA)は細胞内カルシウムイオン濃度変化に依存した経路を介して気孔閉口を誘導することが知られているが、そのシグナル伝達機構の詳細は不明である。我々は、MeJAが誘導する気孔閉口シグナル伝達経路に関する更なる知見を得るために、カルシウム依存性タンパク質リン酸化酵素(CDPK)に着目した。過去の研究によって、シロイヌナズナのCDPKであるCPK3、CPK4、CPK6、CPK11がアブシジン酸の誘導する気孔閉口シグナル伝達経路に関与することが明らかとなっている。そのため我々は、この4つのCDPKの遺伝子破壊変異体を用いてMeJA誘導気孔閉口の観察を行った。結果、CPK6の遺伝子破壊変異体でのみ、MeJA誘導気孔閉口が抑制されていた。CPK6の役割をより明確にするために、気孔閉口に関与する孔辺細胞原形質膜イオンチャネルの活性や活性酸素といったセカンドメッセンジャー産生の解析も行った。我々の結果は、CPK6がMeJAの誘導する気孔閉口シグナル伝達経路で正の制御因子として機能することを示唆している。