抄録
高等植物においてCPD光回復酵素は、UVBによって誘発されるDNA損傷であるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復する主要な酵素であり、またその活性の高低はUVB抵抗性を決定する。植物細胞の核、葉緑体、ミトコンドリアは独自のDNAを有しており、各DNAにはUVBによってCPDが誘発されている。これまでに我々は、イネにおいてCPD光回復酵素はDNAを有する全てのオルガネラに移行して機能する “triple targeting protein” であることを示してきた。しかし、CPD光回復酵素のアミノ酸配列上には、各オルガネラへの移行が予想されるシグナル配列は見いだされず、その移行のメカニズムは不明である。そこで本研究ではまず、核、ミトコンドリア移行に関与する配列を同定することを目的に、CPD光回復酵素の部分配列とGFPとの融合タンパク質を用いた発現解析を行なった。その結果、(1) イネCPD光回復酵素(全長506アミノ酸)の438から506番目のアミノ酸配列とGFPの融合タンパク質においては、核へのGFP局在が観察され、(2) 385から437番目のアミノ酸配列とGFPの融合タンパク質においては、ミトコンドリアへのGFPの局在が観察された。現在は、各オルガネラへの移行に必要なシグナル配列の同定に向けて、CPD光回復酵素のアミノ酸配列部位をより限定して解析中である。