高圧環境下での作業は,様々なストレス[高圧環境や呼吸ガス等の物理的ストレス,長期間の隔離環境での生活といった心理的ストレス]が混在する特殊環境下で,長期間行われる場合が多い.本研究では,長期間の高圧環境滞在による心理的ストレスと認知機能との関連について,作業期間中の環境圧変化に伴う唾液ストレスマーカー(SIgA,α-Amylaze,Cortisol)の変動,POMS質問紙(横山,1994),ストループ検査の課題成績の変化によって検討した.唾液ストレスマーカー及びPOMS質問紙では作業期間中の環境圧の変化に伴う有意な変動はなかった.ストループ検査では環境圧が最大時に最も成績が悪くなったが,一過性の変化であった.3種類の指標間に有意な相関関係はなかったことを含め,本研究の結果は,長期間高圧環境暴露等の心理的ストレスによる直接的な認知機能への影響は少ないことを示唆するものだった.