抄録
これまでに我々は、高等植物の環境ストレス応答機構の解明を目的として、強光・高温応答性遺伝子群の単離を行ってきた。その中にSgt1aが含まれていた。シロイヌナズナゲノムにはSgt1aとbのホモログが存在し、Sgt1bは病原菌あるいはオーキシン応答のシグナル伝達経路に関与することが明らかとなっているが、Sgt1aの機能は不明であった。そこで本研究では、環境ストレス条件下におけるSgt1aの機能解析を行った。5日齢の野生株、Sgt1aおよびSgt1b過剰発現植物(Ox-Sgt1aおよびOx-Sgt1b)、Sgt1aノックアウト株(KO-Sgt1a)、Sgt1b変異株(edm1)の基本高温耐性および獲得高温耐性を評価した。いずれの植物においても、基本高温耐性能に違いは認められなかった。しかし、Ox-Sgt1a、Ox-Sgt1b、edm1の獲得高温耐性能は野生株と同程度であったが、KO-Sgt1aの耐性能は顕著に低かった。そこで、KO-Sgt1aの耐性能低下の原因を調べるため、野生株、KO-Sgt1aおよびedm1において種々の熱応答性遺伝子の発現レベルを解析した。その結果、Hspを含むいくつかの遺伝子の熱応答が野生株およびedm1に比べてKO-Sgt1aで顕著に抑制されていた。以上より、Sgt1aは熱応答性遺伝子の発現誘導を介した獲得高温耐性能に機能することが示唆された。