抄録
シロイヌナズナの転写因子DREB2Aは、熱ストレス・水分ストレスに応答した遺伝子発現において重要な役割を担っている。DREB2Aタンパク質は、ユビキチン‐プロテアソーム系による安定化制御を受けていて、ストレスのない条件下では不安定化されているが、ストレス条件下では安定に核に存在できることが明らかになっている。また、DREB2Aから30アミノ酸からなる領域を除くことで、DREB2Aを恒常的に安定な活性型(DREB2A CA)に改変できることが分かっている。しかしながら、ストレスに応じてDREB2Aを安定化するシグナル伝達経路がどのようなものであるか実体は不明である。
我々は、シロイヌナズナの葉肉プロトプラストで構成的プロモーターによりDREB2AおよびDREB2A CAを一過的に発現させ、熱ストレスに応答した翻訳産物レベルの変化をイムノブロットにより調べた。DREB2Aタンパク質は、GFP融合タンパク質の蛍光観察により示唆されていたように、熱ストレスに応答して著しく蓄積した。意外なことに、DREB2A CAもDREB2Aと同様に、熱ストレスに応答して蓄積レベルが上昇することが見出された。このことからDREB2A CAもストレスのない条件では分解を受けている可能性が考えられた。現在この系を用いて、各種のストレス条件や阻害剤がDREB2Aの安定性に及ぼす影響を調べている。