抄録
植物は塩ストレス条件下で、細胞内に流入したNa +により障害を受ける。これに対し、原形質膜上のK+輸送系のK+/Na+選択性を高めることが、塩ストレスへの適応に重要であると考えられている。K+/Na+輸送体であるHKT(High-affinity K+ Transporter)はK+の取込みやNa+の取込み・排出に働いており、植物の耐塩性に関わっている。本研究では、HKTによるK+取込みと耐塩性の関連を解明することを目的として、HKT過剰発現形質転換イネの作出と解析を行った。イネに存在する8種類のHKTのうち、OsHKT2;2はK+-Na+共輸送体であり、Na+輸送体OsHKT2;1の変異体であるOsHKT2;1S88GはK+輸送体であることがこれまでに酵母発現系の実験で示されている。これらのHKTをそれぞれ導入した形質転換イネを作出し、それらの低K+高Na+条件における生育を調査した。また地上部のK+含量、Na+含量を測定し、K+/Na+比を求めた。その結果、OsHKT2;2系統とOsHKT2;1S88G系統でコントロールに比べ、相対生長とK+/Na+比が高かった。以上の結果からOsHKT2;2とOsHKT2;1S88Gが高Na+条件でK+取込みに機能し、耐塩性に寄与していることが示唆された。