抄録
イネのUVB耐性獲得に関わる主因子の1つは、UVBによって誘発されるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復するCPD光回復酵素であるが、いまだUVB耐性機構の全容は明らかになっていない。そこで、UVB耐性遺伝子資源の探索を目的に、UVB抵抗性イネ・ササニシキに炭素イオンビーム(320 MeV:12C6+, 80 Gy)を照射して、UVB耐性、感受性を示す変異体の選抜を行った。その結果、親株のササニシキよりも耐性を示す変異体UVTSa-319および感受性を示す変異体UVSSa-1の選抜に成功した。これらの変異体は、親株のササニシキと比較して既知のUVB耐性因子(DNA修復酵素活性、UV吸収物質の蓄積量)に変異は認めらなかった。変異部位を同定するため、UVTSa-319、およびUVSSa-1のゲノムDNAを用いたアレイCGH法により、各変異体の欠損領域の推定を行った。UVTSa-319では第7染色体の二つの機能未知遺伝子(AK111251、AK071492)、UVSSa-1では第七染色体の二つの遺伝子(AK073884,AK121807)の欠失が推定され、ゲノムPCRによってもこの領域が欠失していることを確認した。本大会では、各変異体と親株間で行った発現アレイ解析の結果を含め、変異原因遺伝子とUVB耐性との関係について考察する。