抄録
タンパク質合成は酸化ストレスに対して感受性が高い。近年、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803のin vitro翻訳系を用いた研究から、翻訳因子EF-Gの失活がタンパク質合成の酸化ストレス傷害の主な要因になっていることが明らかにされている。さらにEF-Gの失活が特定のCys残基の酸化とジスルフィド結合の形成によることも示唆されている。本研究では、Synechocystisの3つのEF-Gホモローグ(Slr1463, Sll1098, Sll0830)の中で葉緑体型のSlr1463に着目して、その過剰発現株および酸化の標的Cys残基をSerに改変した変異株を作製し、強光に対するタンパク質合成の応答を調べた。EF-G (Slr1463)過剰発現株では、光依存的なD1タンパク質の新規合成が強光下で促進していたが、他の多くのタンパク質の新規合成は抑制されていた。この株では、バクテリア型のEF-GホモローグSll1098の発現が低下していた。これらの結果から、EF-G (Slr1463)は光依存的なタンパク質合成に関与する一方、EF-G (Sll1098)は光非依存的なタンパク質合成を支えていることが示唆される。現在、Cys変異株におけるタンパク質合成を解析している。