日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナの乾燥ストレス適応におけるプリン代謝の生理機能の解析
*渡邊 俊介中川 彩美島田 裕士坂本 敦
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p. 0934

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抄録
植物のプリン分解代謝は,空中固定窒素の利用に必須の代謝経路であるため,主にマメ科植物を対象として長い研究の歴史を持つ。しかし,根粒菌と共生関係にない大多数の植物種においては,その確たる存在意義や重要性は理解されていない。私たちは,プリン分解代謝の初発かつ律速酵素であるキサンチン脱水素酵素(XDH)を標的としたRNAiにより,当該代謝の機能不全が通常条件下におけるシロイヌナズナの生育に著しい支障をきたすことを明らかにしている。XDHはハウスキーピング酵素に分類されるが,乾燥などのストレス条件下でも遺伝子発現や酵素活性が増大することが報告されている。そこで本研究では,ストレス条件下におけるプリン分解代謝の生理的意義の解明を目的に,XDHの発現抑制がシロイヌナズナの乾燥耐性に与える影響を調査した。乾燥処理を施したRNAi発現抑制株では,野生株と比較してクロロフィル含量や生長量が顕著に減少するとともに,過酸化水素の蓄積量や細胞死の割合が有意に増加した。一方,RNAi発現抑制株にXDHの代謝産物である尿酸を与えることで,これらの乾燥ストレスに対する感受性は相補された。尿酸をはじめとするプリン代謝中間体は抗酸化能を有することから,ストレス下におけるプリン分解代謝は,抗酸化物質生成系として植物の乾燥ストレスへの適応に寄与している可能性が示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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