抄録
A. thaliana Metal Tolerance Protein 1 (AtMTP1)は液胞膜に局在し、細胞質亜鉛を液胞へ能動輸送するZn2+/H+ exchangerである。AtMTP1は6回膜貫通型で、細胞質側にヒスチジン残基を25個もつHisリッチループがある。我々はこれまでに酵母異種発現系を用いた解析よりHisリッチループを欠失変異体AtMTP1Δ185-216は輸送活性が顕著に増加することからHisリッチループが輸送活性調節に関与する事を報告している。本研究で亜鉛高蓄積植物の作製およびHisリッチループの生理的役割の解明を目的に、WT-AtMTP1およびAtMTP1Δ185-216をA. thaliana野生株とAtMTP1遺伝子欠損株mtp1へ過剰発現させ解析を行った。亜鉛感受性株mtp1へAtMTP1Δ185-216過剰発現すると亜鉛耐性が回復すること、膜透過性亜鉛蛍光プローブを用いた解析よりAtMTP1Δ185-216の発現により根の液胞内へ亜鉛が高蓄積されている事が確認された。植物細胞内でのHisリッチループの有無によるAtMTP1タンパク質の安定性、イオン選択性、亜鉛輸送能について報告する。