抄録
これまでの研究により植物個体での細胞死関連因子の発現部位をウェスタンブロット及びプロモーター GUS形質転換体の組織染色により発現部位を解析した結果を報告してきた。その結果、花弁の離層、莢において開裂部分、根においては根端及び維管束系等プログラム細胞死の生じる形態形成組織において発現していることが示された。また、ストレス、薬剤等どのようなシグナルがプログラム細胞死を誘導するか解析するためには植物個体よりも細胞レベルでの解析の方が鋭敏な反応が観察できるため、シロイヌナズナの葉より24時間培養後の生存率が80% 程度維持される葉肉プロトプラストの調製培養方法及び調製したプロトプラストによる細胞死を誘導する実験系も確立できた。
しかしながら、この高生存度プロトプラスト化の過程において、植物体の生育スペースの制約、および植物体からのサンプリングに多大な時間と労力を必要であり、このステップがプロトプラストの生存度にも影響していることが判明してきた。これらの問題を改善するため、シロイヌナズナ培養細胞系の導入を検討した。今回、理化学研究所バイオリソースセンター実験植物開発室よりシロイヌナズナT87培養細胞株の譲渡を受け、この培養細胞を使用した細胞死誘導実験系の確立を試みた。